非嫡出子の法定相続分は嫡出子の半分
相続の権利があるのは、非嫡出子については、父親から認知された子だけです。認知されなければ事実上の親子関係があると分かっていても相続の権利はありません。認知がなされていれば民法上の子ですから相続の権利があります。
また認知されていても、非嫡出子の法定相続分は嫡出子の半分です。これには子の名字の変更の手続がとられているか、戸籍がどこにあるかを問いません。
これは法律上の正常な婚姻関係を尊重するとの考え方からの制度です。不合理との考え方も多いのですが、現在のところ最高裁判決で合理性が認めらるとされております。
民法900条4
子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
平成7年に最高裁判決でこの不平等についての判決があり、著しく不平等とはいえないとの結論になっています。
「民法は、いわゆる事実婚主義を排して法律婚主義を採用しているが、その結果として、婚姻関係から出生した嫡出子と婚姻外の関係から出生した非嫡出子との区別が生じ、親子関係の成立などにつき異なった規律がされ、また、内縁の配偶者には他方の配偶者の相続が認められないなどの差異が生じても、それはやむを得ないところである。
本件規定の立法理由は、法律上の配偶者との間に出生した嫡出子の立場を尊重するとともに、他方、被相続人の子である非嫡出子の立場にも配慮して、非嫡出子に嫡出子の2分の1の法定相続分を認めることにより、非嫡出子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものと解される。
民法は法律婚主義を採用しているのであるから、右のような本件規定の立法理由にも合理的な根拠があるというべきであり、本件規定が非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1としたことが、右立法理由との関連において著しく不合理であり、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものということはできない。」
(平成7年7月5日判決最高裁)
日本弁護士会連合会は平成7年7月7日に日本弁護士会連合会会長声明として、次のように主張しています。
「最高裁判所の前記判断は、非嫡出子の差別撤廃に向けての近年の国内外の潮流に完全に逆行するものであって、きわめて不当である。
…裁判実務においても、1993年6月の東京高等裁判所における違憲決定を皮切りに…非嫡出子差別については違憲の判断がむしろ定着する方向にあった。
諸外国においても、昨今嫡出子と非嫡出子の地位の平等化を図る立法が相次ぎ、いわゆる先進諸国で差別を残しているのは日本とフランスのみとなっている。
国際人権(自由権)規約違反を審議する国連の規約人権委員会は、1993年11月、日本の民法の相続分差別は、同規約26条に抵触するとの異例の勧告を出している。」
またこの判決の翌年の平成8年に法務省法制審議会は,「民法等の一部を改正する法律案要綱」を決定し,法務大臣に答申し,摘出でない子の相続分は,摘出である子の相続分と同等としています。
しかし将来に実際に民法改正があればともかくも、現在においては最高裁判決にもとづき、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の半分になっています。