相続排除の実際

裁判所はどのくらいで相続の排除とするのか。過去の審判事例です

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相続排除…判例から見る相続排除の実際


どのくらいで相続の排除とされるのでしょうか。過去の審判事例です。

■娘が暴力団員と結婚し、父母が婚姻に反対なのに父の名で披露宴の招待状を出すなどしたときに、娘を推定相続人から廃除できる。
(東京高裁決定平成4年12月11日)

〈事実〉
]1、]2夫婦の長女Yは小学校低学年から家出・万引等の問題行動を起こし、中学・高校を通じて家出・怠学・不良交遊を繰り返し、少年院送致を含む多くの保護処分を受けた。中等少年院仮退院後も1週間で親元を家出し、鑑別所で知り合った友人宅に身を寄せてスナック・キャバレーに勤め、暴力団員A等と同棲した後、別の暴力団幹部Bと婚姻した。これに対して]らよりYに対し廃除の申立をしたが原審は廃除を却下した。]らは抗告したが、抗告審が係属中に、Yは]らがBとの婚姻に反対していることを知りながら、Bの父親と]1の連名での結婚披露宴招待状を印刷し、両親の知人等に送付した。

〈決定〉
「ところで、民法第892条にいう虐待又は重大な侮辱は、被相続人に対し精神的苦痛を与え又はその名誉を毀損する行為であって、それにより被相続人と当該相続人との家族的協同生活関係が破壊され、その修復を著しく困難ならしめるものをも含むものと解すべきである。……このようなYの……一連の行動について、]らは親として最善の努力をしたが、その効果はなく、結局、Yは……右家族に対する帰属感を持つどころか、反社会的集団への帰属感を強め、かかる集団である暴力団の一員であった者と婚姻するに至り、しかもそのことを]らの知人にも知れ渡るような方法で公表したものであって、Yのこれら一連の行為により、]らが多大な精神的苦痛を受け、また、その名誉が毀損され、その結果]らとYとの家族的協同生活関係が全く破壊されるに至り、今後もその修復が著しく困難な状況となっているといえる。」






■アルコール中毒症のため病気療療養中の夫である被相続人と子らをおいて使用人と駈け落ちし、そのため、これに痛憤しかつ悲嘆にくれた夫が自殺した事案においてかかる妻の行為は虐待又は重大な侮辱にあたる。
(新潟家裁高田支部審判昭和43年6月29日)

■事業の不振により生じた巨額の借財と滞納した税金を申立人(被相続人)に支払わせ、申立人夫婦及び妻に対して暴行・脅迫を加えるなどし、さらに、偽造の申立人の印鑑の登録をして、印鑑登録証明書の交付を受けたうえ、申立人所有の土地につき、申立人から相手方(推定相続人)に対する贈与予約を登記原因とする所有権移転請求権仮登記を得るなどして、被相続人との相続的共同関係を破壌した相手方に対して申し立てられた推定相続人廃除の事案において、相手方の申立人に対する暴行・脅迫行為は、民法892条にいう「被相続人に対して虐待をした」ことに、相手方の妻に対する暴行・脅迫、巨額の借財及び滞納した税金の支払を申立人にさせたこと並びに不実の所有権移転請求権仮登記を得たことは、民法892条にいう「著しい非行」にそれぞれ該当する。
(東京家裁八王子支部審判昭和63年10月25日)

■父の金員を無断で費消したり、多額の物品購入代金の支払いを父に負担させたうえ、これを注意した父に暴力をふるい、その後家出して行方不明になっている長男の行為は、虐待、重大な侮辱又はその他著しい非行にあたる。
(岡山家裁審判平成2年8月10日)


■公正証書遺言には廃除意思が表明されているが、それは推定相続人の所為に対して被相続人が一時の激情にかられてなされたものであり、いまだ廃除原因に該当するとはいえない。
(大阪高裁決定昭和40年11月9日)

■事件本人両名が被相続人に近寄らず火事見舞、病気見舞をしなかったことも、あながち事件本人両名の真にのみ帰せられるべきではなく、被相続人の行為もその原因の一端をなすことが窺えるし、これをもって直ちに事件本人が被相続人を遺棄しあるいは虐待し又は重大な侮辱を加えたものとは認められない。
(佐賀家裁審判昭和41年3月31日)

■被相続人に対し同人所有のほとんど全部の農地につき立入耕作禁止の仮処分をしても、その事情が明らかにされない限り、右仮処分をもって廃除事由たる重大な侮辱があったものとは断定しがたい。
(仙台高裁決定昭和29年2月9日)

■被相続人に対する準禁治産宣告申立があってもそれは被相続人の放埓な生活を反省させるためになされたものであるから廃除事由にあたらない。
(釧路家裁審判昭和33年10月3日)

■重大な侮辱その他著しい非行とは、被相続人に対して故意に暴行などにおよんだ場合をいうのであって、精神分裂病による心神喪失の現況にあるときの行為は相続人廃除の原因にあたらない。
(秋田家裁大館支部審判昭和43年4月23日)

■相続人は、正業に就かず、浪費を重ね、社会の落伍者の地位に転落し、最もたちの悪い親泣かせの部類に属するものであって、著しい非行にあたる。
(東京家裁審判昭和42年1月26日)

■賭博行為を繰り返して作出した多額の借財をすべて被相続人に支払わせ、かつ、妻子を顕みず、愛人と同棲して同女との間に男児をもうけ、愛人との生活を清算する意思もない推定相続人の行為は被相続人との円満な家族的共同関係を自ら破壊したものであり、「著しい非行」に該当する。
(青森家裁八戸支部審判昭和63年9月7日)

■入手した金銭の遊興費としての使用、申立人の財産の無断売却、担保供与、詐欺罪による数回の服役などの行為は著しい非行にあたる。
(新潟家裁柏崎支部審判昭和46年11月8日)

■妻のもとを去って長年月愛人と生活してきた夫が、別居中の妻に対してある程度の財産的な給付をしてきたとしても、精神的に贈を遺棄したものであって、夫の行状は著しい非行に該当する。
(名古屋家裁審判昭和61年11月19日)

■資産家として名を成した両親のもとで不自由なく成育した長女が、離婚後間もなく、両親不知の間に窃盗・詐欺等の前科のある男性と同棲し、同人の就職に際しては実家の信用を利用してその身元引受人となりながら、同人が勤務先から多額の金員を横領して所在をくらますや、年老いた両親の悲嘆、心労等を顧慮せず、音信不通のまま同棲相手と逃避行を続けていることは両親との相続的協同関係を破壊する行為であり、著しい非行に該当する。
(和歌山家裁審判昭和56年6月17日)

■推定相続人が勤務先会社の金員総額5億数千万円を業務上横領した罪等により懲役5年の判決を受け服役した場合であっても相続人廃除原因たる「著しい非行」にあたらない。
(東京高裁決定昭和59年10月18日)

■「自分の病気中子供らを置いてかつ事務経理の引継ぎもしないで男と逃げるとは許せない」という記載のある遺言書は、妻の著しい非行を理由とする推定相続人廃除の意思を表示したものであることが推認される。
(新潟家裁高田支部審判昭和43年6月29日)

■夫やその母らと折り合いが悪かった妻が、夫および夫の母は「親から貰った金も俸給もボーナスも全部しぼり取ったから○○(夫)らには1円の金もやれないし、うちの物や退職金などには指1本もふれさせへん」との内容の危急時遺言をしたが、これは夫の相続分を零としたものというよりは、自己の推定相続人としての遺留分を奪って一物一円をも与えないとしたもの、すなわち、廃除の意思を表示したものと解するのが相当である。
(京都家裁審判昭和36年11月24日)

■「私の現在の財産年金の受給権は抗告人には一切受け取らせないようお願いします」との趣旨が記載されている自筆証書遺言の趣旨は、抗告人を推定相続人から廃除する意思を表示したものと解するのが相当である。
(広島高裁決定平成3年9月27日)


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