認知と相続

認知があれば、相続においては非嫡出子も父親の財産を相続する権利を有します。

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認知と相続…父親の認知で非嫡出子として相続人


認知とは、法律上においては自分の子とされていない者につき、法律上においても自分の子であると認めることです。

結婚していない男女の間で生まれた子(「非嫡出子」といいます)については、母親がだれかは明確ですが、父親がだれであるかは明確ではありません。

この場合にはこの非嫡出子については、母親の名字を名乗りますし、母親の戸籍に入ります。父親と母親とがその子を自分の子だと認識していても、この段階では単なる事実上の親子関係に過ぎず、相続等の法律上の権利関係は生じません。

認知とは、父親が結婚していない女性から生まれた子を自分の子と認めることです。

その結果として、父親と子との関係が単なる事実上の親子関係ではなく、法律上においても親子関係にかわることになります。認知してもそれにより、それがそのまま名字の変更や戸籍の変更に結びつくものではありません。

しかし相続に関しては、非嫡出子であってもも父親の財産を相続する権利を有することになります。

認知は父親自らが認知を届け出ることばかりでなく、その遺言において認知することもできます。「任意認知」といいます。

第七百八十一条  認知は、戸籍法 の定めるところにより届け出ることによってする。

2  認知は、遺言によっても、することができる。



また子自らあるいは親権者である母親ら認知を求めて裁判により認知を求めることもできます。子が未成年者の場合、母親が法定代理人となりますこれを「強制認知」といいます。

この認知の訴えは、父親の生前は父親を被告とすることになりますが、父親がなくなった場合においても死亡の日から3年以内であれば検察官を被告として訴えることができます。

第七百八十七条  子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。



家庭裁判所の調停で認知の合意が成立し、審判によってなされる「審判認知」もあります。

家事審判法第23条  婚姻又は養子縁組の無効又は取消しに関する事件の調停委員会の調停において、当事者間に合意が成立し無効又は取消しの原因の有無について争いがない場合には、家庭裁判所は、必要な事実を調査した上、当該調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴き、正当と認めるときは、婚姻又は縁組の無効又は取消しに関し、当該合意に相当する審判をすることができる。

2  前項の規定は、協議上の離婚若しくは離縁の無効若しくは取消し、認知、認知の無効若しくは取消し、民法第七百七十三条 の規定により父を定めること、嫡出否認又は身分関係の存否の確定に関する事件の調停委員会の調停について準用する。



話し合いによる任意認知が困難な場合には、まず家庭裁判所に認知を求める調停を申し立てることになります。

調停委員を会して話し合うことになります。また親子関係があるかとうのDNA鑑定も合意ができれば可能です。ここで合意になれば家庭裁判所が審判書と確定証明書を出してくれます。これをもって認知届が可能になります。

調停が不調になれば、地方裁判所に強制認知をもとめる訴訟を起こすことになります。なお認知を求める相手の住所がわからなくても公示送達(裁判所の掲示板に掲示することで相手に届いたものとする)による請求が可能です。

なお、非嫡出子が認知を受けて市町村の戸籍窓口に届出をすると、その事実は子の戸籍ばかりではなく、父親の戸籍に載ることになります。

認知日・認知した子の氏名・認知した子の戸籍(つまり一般的には母親の戸籍)、といった「認知があった」という事実が、父親の戸籍に記載されます。なお父親が戸籍を移してしまうと新しい戸籍にはこの認知についての事実は消えてしまいます。

そのために相続手続きの事実としては父親の幼い頃までの、すべての戸籍を追いかけることになります。それをしないと過去に認知した子がいることが分からないままになったりします。そのまま遺産分割協議をしてしまうとその遺産分割協議は無効になってしまいます。
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