自宅の換価分割で発生する譲渡税の回避
親が亡くなって、自宅を子のAとBとが相続します。換価分割が前提です。つまり売却してその売却代金を二人で分けます。
その自宅についてそれぞれ持分2分の1づつに分けてから3000万円で売却しました。それぞれ1500万円づつを手にします。問題が生じるのは譲渡税です。
さてAさんは亡くなった親と同居していました。Aさんにとってはその自宅は居住用財産です。1500万円の譲渡代金を受取りますが、居住用財産を売却した場合には3000万円の売却益までは非課税です。そのためにAさんには譲渡税はかかりません。
Bさんはどうでしょうか。Bさんにとっては、この自宅は、例え生まれ育った家であったとしても、その自宅を出てしまえは居住用財産ではありません。親がなくなってからそこに住んでいたという実績が無ければ、その土地建物の所有者として居住した野ではないですから、居住用財産にはあたりません。だからAさんとは違い3000万円まで非課税といったこともなく、通常なら長期譲渡として最大で売却益に対して税率20%の譲渡税(具体的には所得税・住民税)が課税されます。親がその自宅をいつ買ったかで変わってきますが、1500万円に対して最大で300万円近い課税がありえます。
このような時は、換価分割ではなく、代償分割を行えばいいのです。
「Aは自宅を相続する。その代わりにAはBに1500万円を支払う。」
Aは自宅を3000万円で売却しますが、譲渡税はゼロ。その3000万円から1500万円をBに相続の代償金として払えばいいのです。なお実際には売却に要する手数料等や費用を考慮して代償金を決めないといけません。
Aさんは昭和50年まで両親と同居して育ちました。その後に就職しまた転勤して引っ越ししてそれ以来同居はしていません。その生まれ育った自宅は父親が所有していました。その父親が昭和54年に亡くなりました。相続人は母親とAさんの二人です。それ以来そこには母親だけが住み続けました。平成7年11月に土地建物を5200万円で売却します。売却に先立って平成7年8月に自宅(土地建物)はAさんが相続したとして冬季がされました。売却が決まったので、母親と話し合ってAさんが相続したとして登記したのでしょう。
自宅の売却については、「居住用財産の譲渡」として、譲渡税(具体的には譲渡所得についての所得税と住民税のこと)は優遇されます。それは新しい自宅を買わないといけない等々で、税金を負担する能力が少ないと考えるからです。
ここでは売却額5200万円から自宅の取得原価と売却費用を差し引いて売却益が4000万円だとします。
「居住用財産の譲渡」だとすれば4000万円から特別控除が3000万円も控除できて、課税される対象は1000万円になります。税率も特例で低くなっており、所得税住民税合計14%。つまり課税される税額は140万円になります。
しかし「居住用財産の譲渡」でないのなら一般の長期譲渡所得として課税されます。課税対象は4000万円です。税率は20%になります。それを乗じての税額は800万円です。差額は660万円にもなります。
(当時の税制ではなく平成20年の税制で計算しています)
Aさんは「居住用財産の譲渡」と税務署に申告しましたが、税務署は「居住用財産ではない」としてこれを否認して、課税処分をします。Aさんは国税不服審判書で税務署側と戦います。
自分は確かに住んでいた
自宅売却前提の遺産分割は
さて親が亡くなってその残された相続財産のうちでその自宅を売却するのであれば、注意すべきは税金です。
Aさんの場合には土地建物を母親が相続していれば、居住財産の譲渡特例の3000万円控除は問題なく使えたのです。Aさんが相続してしまったのが失敗です。
さて、それでは、自宅土地建物を所有する父親と長女とが同居していたとしましょう。父親が亡くなったので土地建物を売却しその売却金を家をでていた長男とこの長女とで分配するのならどうしたらいいでしょうか。
普通考えるのは土地建物を共有で相続登記して一緒に売却することでしょう。例えば持分2分の1づづで相続登記をしてから売却します。
長女の売却持分は実際に長女が居住していたのですから、全く問題なく居住用特例が使えます。それは父親が亡くなった後、たとえ短期間であっても「所有者として居住」したからです。(いつ登記したかは関係なく、相続があったときに相続で所有したと考えるからです。)しかし長男は居住財産の譲渡特例を使えません。「所有者として居住」したことがないからです。
正解は、長女が土地建物を全て相続し売却し、代償分割にするのです。具体的には「長女は土地建物を相続する。長女は長男に幾らを支払う。」という遺産分割協議書にするのです。そうしてから売却するのです。長女が売却した部分はすべて居住財産の譲渡特例が適用できます。
独居老人の相続後売却
父親が独居老人だとすると上手くいきません。生前に父親が自分で売却すれば父親はもちろん居住財産の譲渡特例を適用することができます。
しかし父親の相続後に子である相続人が相続して売却しても、その相続人は、その後にそこに実際に居住しない限りは、居住用特例を使う余地はありません。
なお、居住しなくなっても引っ越してから3年目の年末までなら居住用の特例が使えるとなっていますし、家族を自宅に残しての転勤等で残り家族と生計が同じであれば(税務署と争ったAさんが主張した例外の定めです)でも居住用の特例が適用できることもあります。しかしこれも「所有者として居住」していたことが前提になっています。
その自宅についてそれぞれ持分2分の1づつに分けてから3000万円で売却しました。それぞれ1500万円づつを手にします。問題が生じるのは譲渡税です。
さてAさんは亡くなった親と同居していました。Aさんにとってはその自宅は居住用財産です。1500万円の譲渡代金を受取りますが、居住用財産を売却した場合には3000万円の売却益までは非課税です。そのためにAさんには譲渡税はかかりません。
Bさんはどうでしょうか。Bさんにとっては、この自宅は、例え生まれ育った家であったとしても、その自宅を出てしまえは居住用財産ではありません。親がなくなってからそこに住んでいたという実績が無ければ、その土地建物の所有者として居住した野ではないですから、居住用財産にはあたりません。だからAさんとは違い3000万円まで非課税といったこともなく、通常なら長期譲渡として最大で売却益に対して税率20%の譲渡税(具体的には所得税・住民税)が課税されます。親がその自宅をいつ買ったかで変わってきますが、1500万円に対して最大で300万円近い課税がありえます。
このような時は、換価分割ではなく、代償分割を行えばいいのです。
「Aは自宅を相続する。その代わりにAはBに1500万円を支払う。」
Aは自宅を3000万円で売却しますが、譲渡税はゼロ。その3000万円から1500万円をBに相続の代償金として払えばいいのです。なお実際には売却に要する手数料等や費用を考慮して代償金を決めないといけません。
Aさんは昭和50年まで両親と同居して育ちました。その後に就職しまた転勤して引っ越ししてそれ以来同居はしていません。その生まれ育った自宅は父親が所有していました。その父親が昭和54年に亡くなりました。相続人は母親とAさんの二人です。それ以来そこには母親だけが住み続けました。平成7年11月に土地建物を5200万円で売却します。売却に先立って平成7年8月に自宅(土地建物)はAさんが相続したとして冬季がされました。売却が決まったので、母親と話し合ってAさんが相続したとして登記したのでしょう。
自宅の売却については、「居住用財産の譲渡」として、譲渡税(具体的には譲渡所得についての所得税と住民税のこと)は優遇されます。それは新しい自宅を買わないといけない等々で、税金を負担する能力が少ないと考えるからです。
ここでは売却額5200万円から自宅の取得原価と売却費用を差し引いて売却益が4000万円だとします。
「居住用財産の譲渡」だとすれば4000万円から特別控除が3000万円も控除できて、課税される対象は1000万円になります。税率も特例で低くなっており、所得税住民税合計14%。つまり課税される税額は140万円になります。
しかし「居住用財産の譲渡」でないのなら一般の長期譲渡所得として課税されます。課税対象は4000万円です。税率は20%になります。それを乗じての税額は800万円です。差額は660万円にもなります。
(当時の税制ではなく平成20年の税制で計算しています)
Aさんは「居住用財産の譲渡」と税務署に申告しましたが、税務署は「居住用財産ではない」としてこれを否認して、課税処分をします。Aさんは国税不服審判書で税務署側と戦います。
自分は確かに住んでいた
Aさんは「ここにずっと住んでいたことがあるし、その後も父母の生活費負担をしていたから、生計が同じ家族のようなものだ。その家族が住んでいたのだから居住用財産の譲渡だとしてもいいではないか。」と主張します。
税務署側は「Aさんが昭和50年までは居住していたかもしれませんが、その後は住んでいません。確かに生計が同じ家族の誰かが住んでいれば、居住用財産の譲渡と認められることもあります。しかしAさんは昭和54年にお父さんが亡くなってその相続によりはじめて所有者になったのです。そして所有者になってからは居住していません。居住用財産の譲渡特例は所有者として居住していなければ使える余地はありません。だからだめです。」
国税不服審判所は、税務署側の主張を認めて、課税処分を支持しました。(平成10年12月22日国税不服審判所・裁決)
自宅売却前提の遺産分割は
さて親が亡くなってその残された相続財産のうちでその自宅を売却するのであれば、注意すべきは税金です。
Aさんの場合には土地建物を母親が相続していれば、居住財産の譲渡特例の3000万円控除は問題なく使えたのです。Aさんが相続してしまったのが失敗です。
さて、それでは、自宅土地建物を所有する父親と長女とが同居していたとしましょう。父親が亡くなったので土地建物を売却しその売却金を家をでていた長男とこの長女とで分配するのならどうしたらいいでしょうか。
普通考えるのは土地建物を共有で相続登記して一緒に売却することでしょう。例えば持分2分の1づづで相続登記をしてから売却します。
長女の売却持分は実際に長女が居住していたのですから、全く問題なく居住用特例が使えます。それは父親が亡くなった後、たとえ短期間であっても「所有者として居住」したからです。(いつ登記したかは関係なく、相続があったときに相続で所有したと考えるからです。)しかし長男は居住財産の譲渡特例を使えません。「所有者として居住」したことがないからです。
正解は、長女が土地建物を全て相続し売却し、代償分割にするのです。具体的には「長女は土地建物を相続する。長女は長男に幾らを支払う。」という遺産分割協議書にするのです。そうしてから売却するのです。長女が売却した部分はすべて居住財産の譲渡特例が適用できます。
独居老人の相続後売却
父親が独居老人だとすると上手くいきません。生前に父親が自分で売却すれば父親はもちろん居住財産の譲渡特例を適用することができます。
しかし父親の相続後に子である相続人が相続して売却しても、その相続人は、その後にそこに実際に居住しない限りは、居住用特例を使う余地はありません。
なお、居住しなくなっても引っ越してから3年目の年末までなら居住用の特例が使えるとなっていますし、家族を自宅に残しての転勤等で残り家族と生計が同じであれば(税務署と争ったAさんが主張した例外の定めです)でも居住用の特例が適用できることもあります。しかしこれも「所有者として居住」していたことが前提になっています。