「納得できるなら、私はこの遺言書を破り捨てます。」
こんな相続がありました。
「全財産を妻に相続させる」という手書きの遺言書(自筆証書遺言)を夫が妻に残してくれていました。
子供が3人いますが、3人はあまり仲よくありません。財産分けでもめそうだったので夫が妻に残してくれたのです。
遺言書を見て、子供たちは不満そうでした。それぞれが多額の住宅ローンを抱えている等の事情もあり、父親の相続財産を期待したようです。そのままならば、遺言書に従って全財産が妻(子供の母親)のものになってしまいます。でも仕方ありません。
妻は子3人を呼んで、さとすように話し始めました。
「御父さんは私にこのような遺言を残してくれました。私は嬉しく思います。でも3人皆が喧嘩しないで、財産分けを決めてくれるのならば、私はこの遺言書を破って捨てます。皆で納得できる遺産分割をして、そのように財産分けをしましょう。でも喧嘩になったのならば、私はこの遺言書のとおりに全財産を私のものにします。」
どうなったのでしょうか。もちろん皆なかよく遺産分割をして、それなりに財産分けをしました。遺言書は実行されませんでした。
これは最初からのご夫婦の計画通りだったようです。
夫が自分で全財産をどうするのか遺言で決め手もいいのだけれど、子供たちに納得させたい。だからといって相続人で遺産分割協議をさせれば喧嘩になりそうだ。だから全財産を妻にという遺言書を残す。それを元に「3人が喧嘩をしなければ…」という芝居をうってくれ・・・。ということだったのです。
ゼロから始まる遺産分割協議ならば喧嘩になるかもしれないけれど、このような遺言の存在を前提にすれば、収まるように収まる、という夫の予想通りになったのです。
さて有効な遺言書があっても、それに従わなくても問題は無いのでしょうか。
実は遺言書があるのならば、そのまま決まってしまうし、遺産分割協議の余地も無いという最高裁の判決があるのです。
ただし、実務は相続人全員が合意すれば、それに対して訴える人がいませんから、問題が生じないのです。
法律上では相続人である受遺者(遺言による財産の受取人)全員が遺言を放棄すれば、遺言がすべて失効するので、相続財産全てが相続人のものとなるので、そこであらためて相続人全員で遺産分割協議をすると考えます。
また遺言書に従わない遺産分割協議書になったとしても、登記所も銀行も全く分かりません。だから実務的にも問題は生じません。
ただし遺言書に執行人が定められているケースがあります。そのときはその執行人が問題とすることがあるとは思います。
しかし弁護士が執行人だったとしても相続人全員が合意すれば、「仕方がないか」といって執行人を辞任することがほとんどでしょう。
遺言書と違う内容の遺産分割協議書を作成することを、決してお勧めするわけではありません。しかし、全員が合意すれば問題ないというのが、実務です。
なお敢えて言えば、相続人が未成年で特別代理人が選任されていたり、一般債権者や抵当権者が知っているとそこで問題が生じるかもしれません。
なお「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」は相続の欠格として相続人でなくなってしまいます。だから破り捨てることは思いとどまりましょう。
「全財産を妻に相続させる」という手書きの遺言書(自筆証書遺言)を夫が妻に残してくれていました。
子供が3人いますが、3人はあまり仲よくありません。財産分けでもめそうだったので夫が妻に残してくれたのです。
遺言書を見て、子供たちは不満そうでした。それぞれが多額の住宅ローンを抱えている等の事情もあり、父親の相続財産を期待したようです。そのままならば、遺言書に従って全財産が妻(子供の母親)のものになってしまいます。でも仕方ありません。
妻は子3人を呼んで、さとすように話し始めました。
「御父さんは私にこのような遺言を残してくれました。私は嬉しく思います。でも3人皆が喧嘩しないで、財産分けを決めてくれるのならば、私はこの遺言書を破って捨てます。皆で納得できる遺産分割をして、そのように財産分けをしましょう。でも喧嘩になったのならば、私はこの遺言書のとおりに全財産を私のものにします。」
どうなったのでしょうか。もちろん皆なかよく遺産分割をして、それなりに財産分けをしました。遺言書は実行されませんでした。
これは最初からのご夫婦の計画通りだったようです。
夫が自分で全財産をどうするのか遺言で決め手もいいのだけれど、子供たちに納得させたい。だからといって相続人で遺産分割協議をさせれば喧嘩になりそうだ。だから全財産を妻にという遺言書を残す。それを元に「3人が喧嘩をしなければ…」という芝居をうってくれ・・・。ということだったのです。
ゼロから始まる遺産分割協議ならば喧嘩になるかもしれないけれど、このような遺言の存在を前提にすれば、収まるように収まる、という夫の予想通りになったのです。
さて有効な遺言書があっても、それに従わなくても問題は無いのでしょうか。
実は遺言書があるのならば、そのまま決まってしまうし、遺産分割協議の余地も無いという最高裁の判決があるのです。
当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り,何らかの行為を要せずして,被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである。そしてその場合,遺産分割の協議又は審判においては,当該遺産の承継を参酌して残余の遺産の分割がされることは言うまでもないとしても,当該遺産については,右の協議又は審判を経る余地はないものというべきである。
(平成3年4月19日最高裁判決)
ただし、実務は相続人全員が合意すれば、それに対して訴える人がいませんから、問題が生じないのです。
法律上では相続人である受遺者(遺言による財産の受取人)全員が遺言を放棄すれば、遺言がすべて失効するので、相続財産全てが相続人のものとなるので、そこであらためて相続人全員で遺産分割協議をすると考えます。
また遺言書に従わない遺産分割協議書になったとしても、登記所も銀行も全く分かりません。だから実務的にも問題は生じません。
ただし遺言書に執行人が定められているケースがあります。そのときはその執行人が問題とすることがあるとは思います。
しかし弁護士が執行人だったとしても相続人全員が合意すれば、「仕方がないか」といって執行人を辞任することがほとんどでしょう。
遺言書と違う内容の遺産分割協議書を作成することを、決してお勧めするわけではありません。しかし、全員が合意すれば問題ないというのが、実務です。
なお敢えて言えば、相続人が未成年で特別代理人が選任されていたり、一般債権者や抵当権者が知っているとそこで問題が生じるかもしれません。
なお「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」は相続の欠格として相続人でなくなってしまいます。だから破り捨てることは思いとどまりましょう。