家賃収入は誰のも

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遺産分割確定までの家賃収入は誰のもの


未確定の遺産

相続開始から遺産分割協議の決着までには、時間がかかります。遺産にアパート等がある場合は、その間も、家賃収入が継続しています。

この家賃収入は、誰のものなのでしょう。そのアパート等を相続することが決まった人が、相続時に遡って自分のものとするのでしょうか。遺産分割までの間は、『法定相続分』で分配するのでしょうか…。

以下は、日本経済新聞・平成17年9月9日号と最高裁判決を参考にしています。

遺産分割の確定

平成8年…大阪府内にアパートなどを残して、夫が死亡します。相続人は妻と四人の子で、遺産分割協議が難航しました。平成12年…大阪高等裁判所の決定により、やっと遺産分割が確定します。

しかし、決まったのは、財産の分け方のみです。それまでの家賃をどうするかで、再び裁判になりました。

分割確定までの3年間に、家賃収入は、2億円にもなっていたのです。この金額は、『法定相続分』で分配していたようで、妻が1億円を受取っていました。

確定前の分も請求可?

さて、家賃収入の多い賃貸物件は、妻が相続しました。民法上、相続の効力は、相続開始時に遡りその効力を生じます。

第909条・遺産の分割の効力
遺産の分割は、相続開始の時に遡ってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。



妻は…〈相続した賃貸物件の家賃は、相続開始時からすべて自分のもの〉‥と考えます。そこで、子に対し…〈過去の家賃を精算しろ〜〉と、差額分9,000万円を請求し、それが最高裁まで持ち込まれます。

分割確定前は共有!

判決は、妻の負けです。

複数の相続人がいるのなら、相続開始から遺産分割確定までの間の相続財産は、相続人全員の共有の状態にある。そして家賃収入は相続財産とは別個の財産であり、遺産分割が決まるまでの家賃収入はその相続分に応じて各相続人がそれぞれ単独で取得するものである。したがって、相続開始から本件遺産分割が確定するまでの間に本件各不動産から生じた賃料債権は、被上告人及び上告人らがその相続分に応じて分割単独債権として取得したものであり、…これを前提として清算されるべきである。
最高裁判決・平成17年9月8日



法定相続分で分配

遺産として残されたアパートの家賃収入は…相続開始から遺産分割確定までは、すべての相続人に、『法定相続分』によって分けられます。遺産分割が確定した後は、そのアパートを実際に相続した人のものです。
アパートだけでなく、月極駐車場の収入がある場合も同じです。遺言により、アパートや駐車場を誰が取得するか決まっていれば…当然、最初からその人のものです。

「所得税」も、同様に考えます。遺産分割確定前の家賃収入は、「所得税」の課税対象になります。各相続人が、それぞれの『法定相続分』に従って、不動産所得の申告をするのが原則です。

税金は面倒

『法定相続分』に従うとはいえ…家賃全額を相続人の誰かが申告していれば、大きな金額でない限り、問題になるとは思えません。税務署の職員も、〈誰かが申告して税金を払っていれば良しとしよう〉‥と、考えるでしょう。

ある相続人の所得を増やせば、その分、他の相続人の所得から減らすことになります。とても面倒です。
そこで(?)、〈相続人間で自由に調整していいから、後で文句は言わないで欲しい〉‥といった、通達もあります。

所得税法基本通達5-22
遺産の分割その他の事由により相続人または相続分もしくは相続財産に異動を生じた場合であっても、その前に生じた承継国税および納付責任の消滅の効果には影響を及ぼさないものとする。


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