使用貸借(タダ借用)

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賃貸借と使用貸借とでは全然違う


友人から本や自動車を無償で借りたらそれは使用貸借です。本お読み終わったり、自動車を使ったら、貸主に返還する契約をいいます。

使用貸借は,賃貸借と異なり無償の契約です。通常は親子兄弟や友人知人など特別な人的信頼関係に基づくものです。ですから民法599条は,使用貸借は借主の死亡によってその効力を失うと定めています。つまり本を駆り続けて読み続ける権利や自動車を借りつづける権利は相続されないのです。

ただし本や自動車ぐらいなら問題にはならないでしょうが、住む家とか土地とかなると問題は大きくなります。

他人の建物を借りていたり、他人の土地を借りていたりしても、それが賃貸借とは限りません。

賃貸借は、家賃を払って、あるいは地代を払って借りていることです。賃貸借であれば、その権利、すなわち賃借権は相続されます。だからアパートを賃貸借で借りているときはその相続人は賃借権を当然に相続しますからそこに住み続けることができます。

しかし、使用貸借は違います。「知人だから家賃を払わずにただで住んでいる」というのが使用貸借です。タダではなく固定資産税相当額を負担していたとしてもそれは実費負担であり使用貸借とされることが多いようです。民法595条において使用貸借の場合には、「借主は、借用物の通常の必要費を負担する。」とありますから、実費負担の場合にはそれは家賃や地代ではないのとの判断になってしまうからです。

使用貸借であればその権利は相続されません。「賃貸借」で借りているのか「使用貸借」で借りているのかで、大きな違いになります。


(賃貸借)第601条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

(使用貸借)第593条 使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。




使用貸借については、タダもしくは実費負担で借りるということだから、そんなに強い権利ではないとも言われますが、土地の使用貸借についてはそんなことはありません。

期間が定まっていればそれに従いますが、土地をタダで借りてそのに建物を建てたケースでは期間が定められていないことが多いでしょう。その時は「借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。」となります。

建物を建てる目的で使用貸借で借りた場合には、建物がちゃんとしている間、つまり建物を建てるという目的での使用収益ですから、通常で建物が利用できる期間は駆り続けられます。数10年になってしまうでしよう。

(借用物の返還の時期)
第597条 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。

2 当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。

3 当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。



しかし、使用貸借は借主が死んでしまえばそれで終わりです。民法がそれを明確に定めています。なお借主でなく貸主が死亡した場合には特約がなければ終了とはなりません。

(借主の死亡による使用貸借の終了)
第599条 使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。




自分の住まいを賃貸借でなく使用貸借で借りているのなら、借主が亡くなるとそのまま権利が消滅してしまうのが原則です。

不動産を使用貸借で借りている場合には、その権利は相続できないのが原則なのです。必要であれば借主の生前に何らかの対処をしておきましょう。

ただし、借主が死亡しても使用貸借が終了しない場合として、こんな判決もあります。

 建物所有者BはAを実子同然に育ててきて23年間も共同生活をおくりAはBの面倒を見てきました。Bが家を出て同居が終わっても、この建物から出ていけとは言われませんでした。Bは亡くなります。建物の所有者はBの相続人に移ります。

 一方でAもその翌年に亡くなります。そして建物にはAの子が住み続けます。

 Bの相続人はAが死んだことをもって「使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。」との民法の規定に基づいて、建物から立ち退いて建物を返還するように求めました。

 このケースで東京高等裁判所は、貸主と借主の家族とが長年同居してきたような場合、貸主と借主の家族との間には、貸主と借主本人との間と同様な人的関係があるというべきであるから、民法599条は適用されないものと解するのが相当であるとしました。つまり特別な人的関係がある場合には、使用貸借であってもその相続人は引き続いて借り続けることができるという結論です
(東京高裁判決平成13年4月18日)


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