親の相続財産を子の借金から守るためには
相続と詐害行為
債務者が、その債権者に損害をかけることを知りながら行った行為を、法律上の『詐害行為』と言い、債権者が取り消すことは可能です。相続周辺では、財産を目的としなければ、同様の行為でも『詐害行為』になりません。
親が、不動産を残して死亡しました。相続人は、AとBの二人ですが、Aは借金だらけです。
Aが不動産を相続すれば…債権者は、その相続した不動産から、借金の回収をすることができます。そして、AとBは…〈Aが何も相続しなければ、回収できないだろう〉‥と、考えました。
分割協議は詐害行為
相続人A・Bは、『遺産分割協議』によって、不動産すべてをBが相続することにします。その結果、Aは何も相続しなかった上に、自己破産の申立てをしたのです。
相続財産からの回収を期待していた債権者は、〈『遺産分割協議』は『詐害行為』だから取り消せ〜〉と、訴えます。〈『遺産分割協議』そのものが債権者を害するための行為である〉として、取消を求めたわけです。
そして、債権者の訴えが認められます(最高裁・平成11/6/11)。この『遺産分割協議』は、《詐害行為取消権行使》の対象になるのです。
遺産は共有財産
遺産相続においては…相続財産すべてが、親が死亡した時点で、AとBの共有になっています。『遺産分割協議』とは、その共有財産を、A・B二人に具体的に帰属(確定)させることです。
未分割とはいえ、〈相続により一旦所有した共有財産を無いものにする〉という行為は、債権者の財産を減少させる行為です。そこで、債権者に対する『詐害行為』となるわけです。
放棄は身分行為
さて、相続の開始から3ヶ月間は、『相続放棄』ができます。同じケースで、Aが『相続放棄』をしました。多額の相続財産があるにもかかわらず、放棄したのです。債権者が、『詐害行為』であるとして、訴えました。
『相続放棄』とは、〈相続人にはならない〉という、身分に関する行為です。〈故意に財産を減らす〉という、『詐害行為』ではないのです。『相続放棄』は、《詐害行為取消権行使》の対象になりません(最高裁・昭和49/9/20)。
遺言は詐害行為に非ず
親は、Aが借金まみれであることを、生前に知っていました。そこで、〈全財産をBに相続させる〉‥と、『遺言』を残しました。
『遺言』により、『遺産分割協議』は不要で、全財産がBの所有になります。親は債務者ではありませんから、親が『遺言』を書くという行為は、『詐害行為』に該当しません。
『遺言』で何も相続財産を取得できなかったAには、『遺留分減殺請求』により、一定の財産を得る権利があります。請求をするか否かは、Aの自由ですが…。
財産を借金から守る
Aは、『遺留分減殺請求』をしません。すると、債権者がAに《代位》して請求を行いました。債権者は、債務者に代わり債務者の権利を主張することができるのです(『債権者代位』といいます)。Aに代わる債務者が、Bに対して、財産の遺留分を請求したわけです。
しかし、『遺留分減殺請求』とは…相続人専属の権利であり、債権者等の他者が介入することはできないのです。『遺留分減殺請求』は、『債権者代位』の対象になりません(最高裁・平成13/11/22)。
親の財産を、子の借金から守るために…子が『相続放棄』をするか、親が『遺言』を残します。〈『遺産分割協議』で相続しないことを決める〉のは、ダメです。
債務者が、その債権者に損害をかけることを知りながら行った行為を、法律上の『詐害行為』と言い、債権者が取り消すことは可能です。相続周辺では、財産を目的としなければ、同様の行為でも『詐害行為』になりません。
親が、不動産を残して死亡しました。相続人は、AとBの二人ですが、Aは借金だらけです。
Aが不動産を相続すれば…債権者は、その相続した不動産から、借金の回収をすることができます。そして、AとBは…〈Aが何も相続しなければ、回収できないだろう〉‥と、考えました。
分割協議は詐害行為
相続人A・Bは、『遺産分割協議』によって、不動産すべてをBが相続することにします。その結果、Aは何も相続しなかった上に、自己破産の申立てをしたのです。
相続財産からの回収を期待していた債権者は、〈『遺産分割協議』は『詐害行為』だから取り消せ〜〉と、訴えます。〈『遺産分割協議』そのものが債権者を害するための行為である〉として、取消を求めたわけです。
そして、債権者の訴えが認められます(最高裁・平成11/6/11)。この『遺産分割協議』は、《詐害行為取消権行使》の対象になるのです。
遺産は共有財産
遺産相続においては…相続財産すべてが、親が死亡した時点で、AとBの共有になっています。『遺産分割協議』とは、その共有財産を、A・B二人に具体的に帰属(確定)させることです。
未分割とはいえ、〈相続により一旦所有した共有財産を無いものにする〉という行為は、債権者の財産を減少させる行為です。そこで、債権者に対する『詐害行為』となるわけです。
放棄は身分行為
さて、相続の開始から3ヶ月間は、『相続放棄』ができます。同じケースで、Aが『相続放棄』をしました。多額の相続財産があるにもかかわらず、放棄したのです。債権者が、『詐害行為』であるとして、訴えました。
『相続放棄』とは、〈相続人にはならない〉という、身分に関する行為です。〈故意に財産を減らす〉という、『詐害行為』ではないのです。『相続放棄』は、《詐害行為取消権行使》の対象になりません(最高裁・昭和49/9/20)。
遺言は詐害行為に非ず
親は、Aが借金まみれであることを、生前に知っていました。そこで、〈全財産をBに相続させる〉‥と、『遺言』を残しました。
『遺言』により、『遺産分割協議』は不要で、全財産がBの所有になります。親は債務者ではありませんから、親が『遺言』を書くという行為は、『詐害行為』に該当しません。
『遺言』で何も相続財産を取得できなかったAには、『遺留分減殺請求』により、一定の財産を得る権利があります。請求をするか否かは、Aの自由ですが…。
財産を借金から守る
Aは、『遺留分減殺請求』をしません。すると、債権者がAに《代位》して請求を行いました。債権者は、債務者に代わり債務者の権利を主張することができるのです(『債権者代位』といいます)。Aに代わる債務者が、Bに対して、財産の遺留分を請求したわけです。
しかし、『遺留分減殺請求』とは…相続人専属の権利であり、債権者等の他者が介入することはできないのです。『遺留分減殺請求』は、『債権者代位』の対象になりません(最高裁・平成13/11/22)。
親の財産を、子の借金から守るために…子が『相続放棄』をするか、親が『遺言』を残します。〈『遺産分割協議』で相続しないことを決める〉のは、ダメです。